遥乃陽 diary

日々のモノトニィとバラエティ 『遥乃陽 diary』の他に『遥乃陽 blog 』と『遥乃陽 novels 』も有ります

世の中は感動と憂いに満ちている。シックスセンスが欲しい!

くらがり坂の清水と加州清光の住い

この清水(しょうず)が在る『くらがり坂』は、金沢市内の文学的に有名な『明かり坂』や『暗がり坂』が在る浅野川沿いの廓街の情緒豊かな主計(かずえ)町ではなくて、犀川河畔の城南2丁目の河岸段丘を上り下りする『くらがり坂』です。

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地域の交流の場として金沢市はポケットパークの様に、金沢市城南2丁目40-1近くに在る『くらがり坂の清水』を整備したのですが、奥の湧き水場と左斜面が鬱蒼として暗いので、とても此処で急速する気にはなれません。

『くらがり』の名に囚われずに、湧き水の滴りの周囲と左右の斜面を現代的な明るいデザインに施工して、暗がりや覆う影を無くし、得体の知れない怪異や爬虫類が棲まうような雰囲気を醸し出さないで貰いたいです。

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この辺りが昭和40年代に区画整理されるまで、坂上の上笠舞の集落から犀川上菊橋袂の城南地区の集落まで、街灯は全く無くて、夜は月明かりや星明りを頼りに歩く、本当に真っ暗な道でした。

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小学3年生の時に城南2丁目の犀川の堰で黄昏時まで、暗くなるのに気付かずに遊んでいて、一緒にいた友達と慌てて帰った記憶が有ります。

月が昇り掛けの時刻、疎らな雲の流れが時折り星明りを隠す中、段丘の影になった暗い道を、道脇の小川の流れの朧な光を頼りに戻りました。

『くらがり坂』の清水で足を浸してから、早く帰ろうと坂道を見ると、両脇に茂る木々が夜空を隠して、路面は暗闇にぼんやりと仄かに見えるだけです。

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この道は、小立野台地上の上野町から下菊橋を渡って寺町台地へ行く近道なのですが、夜は真っ暗になるので、提灯や懐中電灯の灯りが無ければ、上笠舞の集落から人家の明かりが続く下笠舞の猿丸神社の方へ人々は迂回していました。

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当時は、現在よりも治安は良くなくて、強盗や人攫いの事件も多く、また得体の知れない物が徘徊していたり、神隠しの噂も有って、しょっちゅう親から気を付けるように注意されていました。

見るからに真っ暗な夜道の危険さと不安な心細さに、友人と二人で迷子になりかけて、泣き叫びながら亀坂(がめざか)の麓まで走ったのを覚えています。

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あの頃は、崖面からの白糸のように滴り落ちる水と、こんこんと崖淵から湧く水で、洗い場は豊かに満ちていて、辺りの路面は湿っていました。

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清水は主に作物の洗い場として使われていました。

坂下の道路右脇の際からも湧き出していて、道の両側は細い小川筋でしたが速い流れでした。

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小立野台地や笠舞段丘などの河岸段丘の斜面や際には至る所に湧き水の清水が在り、夏になると清水の周囲や清水から流れる小川沿いは、多くの蛍が緑の光の尾を引きながら飛び舞っていました。

ある夏の夜、立坂下に在る実家の背戸に面する斜面の竹薮の中に、仄かな緑色の光が集まるのに気付いて、昼間にその場所へ行ってみたら、新しい湧き水の溜まりを見付けた事が有りました。

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『くらがり坂』の清水は、犀川河岸段丘の一番下の河川敷に近い城南地域の平地の笠舞段丘斜面際にが在ります。

ここは笠舞段丘が二段になっている場所で、『くらがり坂』上の平地から更に坂を上がりば、亀坂下の平地になります。

亀坂下の平地を斜面沿いに山側へ進むと善光寺坂下に在る『大清水』に至ります。

亀坂の上は、天徳院が在る河岸段丘最上段の小立野台地上です。

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段丘上の宅地化開発によって浸透水が減少してしまった現在は、多くの湧水が枯渇して、再整備された『くらがり坂の清水』も、辛うじて湧き水の流れが見られるような状態です。

河岸段丘の砂礫層を浸透して来る清浄な湧き水は、通る水脈で洗浄された細かな砂と礫を運んで来て、洗い場だった小さな清水池の底に敷き詰めています。

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定期的に枯葉やゴミの除去や敷地の清掃がなされている事によって異臭や濁りも無く、水底に堆積した清浄な砂と湧き水の慎ましい流れは、クレソンと緑鮮やかな水蘚を群生させています。

(くらがり坂の湧き水は清浄ですが、水質基準的に生水での飲用は控えて下さい)

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清水のクレソンは食べられます。

因みに食するクレソンには、血圧上昇を抑えるのと脂質代謝を促進、そして老化防止の効果が有ります。

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PS 1:

笠舞の地蔵尊(金沢市笠舞2丁目21-11辺り)

クランクに曲がる『くらがり坂』の上り切った河岸段丘から、更に亀坂下の河岸段丘へのS字に曲がる坂の上り切る直前の角には、地蔵が並んでいます。

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藩政期には、地蔵尊が在る坂を上り切った所から亀坂下まで罪人の処刑場が在り、坂を上り切った右手の笠舞第1公園辺りから河岸段丘縁までは、飢饉や災害で貧窮して生活が立ち行かなくなった者達を救済する非人小屋が在りました。

非人小屋は別名、御救(おすくい)小屋と呼ばれ、故に加賀藩領内では『非人』は士農工商に含まれない卑しい扱いの『被差別民/賤民』を指す言葉では有りません。

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非人小屋には士農工商の身分に含まれない、人々が忌み嫌う卑賎な生業の者も収容されて、『皮多/かわた』、『藤内/とうない』の括りで区別されていましたが、露骨な差別は有りませんでした。

(石川県や富山県の年配者が小さな生活地域を現す言葉で、よく『部落』を口にしますが、これは『村集落』を示す事で、他地域で用いるの差別言葉では有りません)

城南中学校裏の河岸段丘縁には屠殺場が有って、『皮多/かわた』の人達が従事していました。

物乞いをする乞食達も、加賀藩は非人小屋に収容して鑑札制で管理統率していました。

故に、人に非ず身分の人達や無届け移住者まで検めて管理していた加賀藩の藩領には、正体不明者は存在していませんでした。

f:id:shannon-wakky:20161008050703j:plain刑場で処刑された身寄りの無い罪人、非人小屋で亡くなったの身寄りの無い住人、飢饉や災害で亡くなった身内の供養の為に、刑場や非人小屋の周辺に点在して納められていた地蔵菩薩を集めて祭ったのが、笠舞地蔵尊です。

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 敷地6000坪以上(現:金沢市笠舞1丁目の北西側半分)、20軒長屋が45棟、収容2000~4000人の非人小屋は、災害で仕事場を失った職人達も居て、木工品、鉄工品、縫織工、などの日用品全般の製造及び、各種工芸品の製作が行われていた、衣食住を加賀藩から保障される職業斡旋所、職業訓練所、売り上げ歩合から賃金も支払われる職場と生活のシェアライフ地区でした。

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小立野台地上から見た非人小屋が在った辺り。現在は住宅が建ち並び、清光の碑以外に痕跡は無し。

 

山手側奥の涌波村の大道割近くには塩硝御蔵(土清水/つっちょうじ製薬所)が在りましたから、藩政期末頃には、小立野台地上から浅野川縁の田井町へ下りる牛坂(うっさか)の際に在った上野村弾薬所(現、坂下り際から石川県警察学校が在る一帯)へ運ばれて火薬にされた一部を使って、線香花火を非人小屋の製造所で作り、それを富山の薬売り達が加賀藩塩硝の販売サンプルとして、外様各藩の重役や豪商へ運んでいた事でしょう。

(加賀藩製の塩硝を用いた線香花火は、発色の良い火花が多く飛び散り、火玉が落ち難く長持ちして、人気が有った)

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犀川対岸の寺町台地上から見た非人小屋や刑場が在った辺り。建ち並ぶ住宅で、河岸段丘の判別が難しい。

 

PS 2:

非人清光の碑(金沢市笠舞1丁目5-15の角)

話は変わりますが、アニメ『刀剣乱舞』の歴史改変を防止する刀剣男子のキャラに加州清光というのがいます。

刀を擬人化したキャラで、『清光』は刀の銘です。

この清光を使うのが沖田総司で、史実は他人の騙りの『菊一文字則宗』でなくて、池田屋騒動まで『清光』でした。

(池田屋で刀身に亀裂が入って修理不能になった以後も、別の『清光』を帯剣したらしい)

池田屋で折れた『清光』は、加州の名の通り、加賀藩金沢に住む刀鍛冶師の清光が製作した細身の直刀っぽい日本刀です。

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十二代続いて刀鍛冶を相伝した清光は、太平の世で依頼が無くて生活に貧窮した六代と七代が、金沢市の笠舞に加賀藩が設けた生活救済施設の『非人小屋』に住み、細々と刀鍛冶を続けています。

それ以降、『清光』の刀銘は別名『加州清光』に加えて『非人清光』と呼ばれています。

『非人小屋(御救小屋)』は、金沢市の実家近くに在りましたが、区画整理される前の子供の頃の記憶では、その辺りは既に遺構も無く水田と果樹園が広がっていました。

非人小屋での加州清光の住まい兼鍛冶場が在ったらしき場所には、現在、日本美術刀剣保存協会金沢支部と東京国立博物館工芸課の方々が製作したモニュメントの碑が有ります。

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モニュメントの銘板部分には、石板の罅割れの修復か、石板から銘板が剥がれたり、盗難されるのを防ぐ為か、当初には無かった3本のステンレス製の帯が巻かれていて、銘板の中央の帯が、折角の銘文を読み難くしています。

(安価で施すには、帯びが銘文を真横に跨ぐ様な安易策しか、できなかったのだろうか?)

因みに『清光』の一振りは東条英機の愛刀でした。

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河岸段丘最上段の小立野台地上に辰巳用水が完成したのが、1632年寛永9年)。

非人小屋(御救/おすくい小屋)が開設されたのが、1670年(寛文10年)。

生業の仕事が極薄で日々の暮らしに窮乏した六代目の上刀鍛冶、長兵衛藤原清光の一家(長男の長右衞門と弟の八兵衞)三人を、1675年(延宝6年)には加賀藩が窮民救済で広大な御救小屋の一角の匠区域に収容していますから、安定した浸透水で水量が増えた笠舞大清水から引いた水や、3~5mも砂礫層を掘れば豊かに湛えるようになった井戸水が、鍛冶の焼き入れにの冷水に使われていた事でしょう。

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1687年(貞享4年)に六代目の長兵衛清光が亡くなった後、非人小屋を出た七代目の長右衞門清光も直ぐに生活が貧窮して1688年(元禄元年)に、再び非人小屋に戻っています。

七代目の長右衞門清光は1723年(享保8年)に他界。

息子の八代目長兵衞清光(1754年/宝暦4年没)以降は、小立野台地上(現:金沢大学付属病院付近)に居を移し、上クラスの刀鍛冶として生業を継いでいます。

下刀鍛冶身分の六藏守種も1684年1687年(貞享元年から4年)の間に非人小屋へ移住して加賀藩に救済されています。

(当初は従来の仕事場と非人小屋の鍛冶場を住み分けていたのか、正確な移住年は不明です)

貞享の後は、天下泰平、庶民文化満開の元禄ですから、刀造りの仕事は極めて乏しくなり、中クラス、下クラスの刀鍛冶は日用刃物で稼ぐしかなくなる頃です。

 

PS 3:

文学的な金沢市主計(かずえ)町の暗がり坂と明かり坂

茶屋街の重要伝統的建造物群保存地区とされている浅野川大橋の南西河畔沿いの主計町と、橋場町交差点近くの『爪先上がりの小路』の坂を上がった下新町を繋ぐ階段坂が、暗がり坂と明かり坂です。

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爪先上がりの小路の坂上から橋場交差点方向を見る。

 

どちらの坂も明治期以後、泉鏡花、木倉屋銈造、国本昭二、五木寛之の文豪達の著作によって有名になり、金沢市の観光スポットを代表する一つです。

(湯涌温泉滞在中の竹久夢二が招かれる浮世話とか、徳田秋聲や室生犀星の行きがかり物語などは無かったのだろうか? ……でも、犀星なら広小路の石坂/いっさか:西の茶屋街だったんだろうなあ)

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暗がり坂の上り下り。

 

日の出から日没まで陽に照らされる坂上の現世と、昼過ぎから黄昏時みたいに薄暗さが漂い始めて、夕刻には闇に沈み誘蛾灯の灯る坂下の異世界は、二つの曲がり折れる階段坂で隔たれています。

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明かり坂の上り下り。

 

階段坂は曲がり折れる場所で、覗き見る異世界に畏怖を、振り返り見る現世に未練を、思案する坂の様に感じさせます。

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行きつ戻りつの葛藤などせず、下りて異世界の狭間で浮かれ惑うのも好し、上がりて平穏無事の柔らかな緊迫も良しです。

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何かをする予感 (2012年1月28日 土曜日のオラクル)

『何かがある』、『何かをする』、そんな予感を度々感じます。

それは、何かに呼ばれているような気配や、何かが起きたり、現れたりするような予感で、結果は、レスキューをするか、道標モドキになるかの、ちょっとした自己犠牲を強いられるような事ばかりです。

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これは、2012年1月28日に関西国際空港の出国管理ゲートで、体験した出来事です。

その日は春節(中国正月)休暇の終わり頃で、中国へ戻る大勢の人や海外へ渡航する人達が、イミグレーションのフルオープーンした十人の係官のカウンターへ長い列を成していました。

手荷物と身体の検査を終えてイミグレーションエリアへ向かうエスカレーターを降りながら、各列の長さと並ぶ外国人らしき人数を数え、そして、短くて外国人が少ない列を定めると足早に真っ直ぐに向かいます。

その最後尾へ並ぼうとした直前で、脇から少年が駆けて来て素早く四人連れの家族に先へ並ばれてしまう。

一気に四人も増えてしまったので、そこは遠慮して違う列を探します。

その時、『此処に並ぶな、という事なのか?』と、そんな思いがして、『何かが有るのか?』、『何かをさせるのか?』、そんな予感をはっきりと感じました。

『でも、この列じゃない!』、『だけど、此処で何かがある……』。

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次々に降りて来る出国者に遅れまじと、二列隣りの大柄な外

人が多くて列は長そうに見えるけれど、並ぶ人数が少ない方へ動くと、あと二歩ばかりのところで二人連れのプロレスラーみたいのに並ばれてしまった。

目の前の壁で塞いだような二人を見て、『此処とも、違うのか』と考えてしまう。

これだけ外国人が多いと、他の列より二、三人少なくても、それは気分的な慰めで、これまでの経験上、同じくらいの所要時間になる。

まして二人も増えたから絶対に遅い!

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まだ時間に余裕が有って別に急ぐわけでもないのだけれど、二度も思惑が外れて面白くないのとオラクルを感じた所為で、再び列を変えてみようと思い、一番左端の列に並びました。

他の列と同じくらいの人数が並んでいる其の列は、私の前に車椅子に乗った年配の女性と、その介護の娘さんだと思われる私と同年輩ぐらい人がいて、十五、六人が並んでいます。

車椅子が前後の距離を稼いで列の人数が同じほどなのに、見た目が他の列より長くなっているからなのか、今度は誰にも先を越される事も無く列の最後尾に並べてホッと安堵の溜め息が出てしまう。

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列の遅い進みに合わせて歩む私は、『こんな事なら、最初の列に我慢して並べば、良かったな』と、自分の行動の無意味さを恥ずかしく感じながらも、『でも、何かがある予感がしていたし……、この列なのだろうか?』と、並んだ列の前後と辺りを見回しながら、そう思っていました。

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列が二、三人分進んだ頃に、三つ向こうの列の女性係官が仕切りの中で出国者のパスポートをチェックしながら、チラチラとこちらを見ているのに気付いたのです。

私と視線が合った係官は出国スタンプを打ち終えると、次の出国者がカウンターへ近寄ってパスポートを差し出す前に立ち上がり、開いた右手の掌を口に沿わせて、私に向かって大声で言いました。

しかし、何かを説明するように大声で話している言葉は、幾つもの列に並ぶ大勢の人達のざわめきが篭るように反響しているのと、少し遠い距離に、女性の声のトーン細さで、全然聞き取れません。

そして、立ち上がった女性係官の左手は真横に伸ばされて、その人差し指はイミグレーションルームの右端を指し示しています。

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出国カウンター近くの幾人かは、立ち上がった係官を注視しているけれど、その行動の意味するところを分かっていない様子で、私の周りの人達は誰も係官のジェスチャーに気付いてさえいないです。

この時、私は彼女の言わんとする事を理解して、この列に並ばされた意味を知りました。

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直ぐに私は、目の前に立つ介護の女性の肩に触れて、振り返る彼女に告げました。

『ここは、車椅子が通れないです。右の壁沿いに専用窓口が有って、広くなっているようです。ほら、あそこの係官が教えてくれていますよ』

娘さんと思しき女性は、私の言葉を聞いて立ち上がってこちらを見ながら右側を指し示す係官を見て、それから車椅子が通れる専用カウンターの方を一瞥すると、車椅子の背凭れ越しに屈んで母親へ説明する。

女性係官は頷く私を見て、意思が伝わった事を知ると御辞儀をしてから座り、一時停滞していた業務を再開した。

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『ありがとうございます』と言って頭を下げ、右端の専用通路へ向かう車椅子の親子連れを見ながら、一緒に付き添いのフリをして通過できたかもと、セコい事を思ってしまう自分を浅ましく思う。

 

私にとって、立ち上がった係官のジェスチャーを理解して、その意思を直前に並ぶ親子に伝えた事が重要ではなくて、降りて来る予感の察しと、なすべき行いが親切で済んだ事に有ります。

それまでに、横転して煙が上がる車からドライバーを救い出したり、土手の火事や建物の小火を消したり、悪戯心を退けて人身事故を回避したり、などが有って、『危ない』を自覚するより先に身体が動いていました。

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いつか、それがデンジャラスに満ちて、非常にクライシスで、絶望的な状態・状況を回避する役目に導かれるかも知れないと、心配しています。

『臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前』、『闘う者達よ、皆、我の前に陣を敷き、我を災厄から守りたまえ』

その時も、印を契って最悪から逃れ得るだろうか?

 

尚、イミグレーション(入出国管理)エリアは撮影が禁止なので、写真は有りません。

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電動バイク(中国の電動車/2016年~)

日本の公道では殆ど見かけない電動バイク(ローパワーの電動スクーター)が、中国では溢れるように走っています。

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ロードレーサータイプも有ります。

カラーリングと外観デザインは豊富です。

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中国では電動バイクが自転車と同等と見なされていて、運転免許の取得は必要無く、道交法の教習も有りません。

電動バイクの所有は購入時の登録番号のみで、税金や自賠責も有りません。f:id:shannon-wakky:20160524233146j:plain

価格はデザインや機能によって差が有り、1800~5000元で好みのタイプを購入できます。

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黄色いモデルで、3348元(2016/05/25レートで約5万6千円)です。

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黄色いプライスカードに表示された『供車』とは、分割で車を買うという意味で、通常は12回払いです。

表示されている数字は、頭金です。

価格から頭金を差し引いた残りを12回の分割で払うというのが、此処での一般的な分割払いで、当然、頭金の額が多い程、月々の支払い金は少なくなります。

左奥の青いので頭金が125元から、中央のカラフルなのは頭金310元から、その右横の青と白のツートンは頭金200元からの残金分割払いにして、それぞれ購入できます。

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実際スピードはモデルによって違い、25~60km/h。

バッテリーの出力持続は使い方と季節によって違いますが、フル充電で20~40kmくらいの走行距離かな。

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電動バイクの法的規制は各省でかなり違っています。

江蘇省では電動なら何でも有りみたいにウジャウジャと走っていますが、広東省では無音で後ろから近付いて手荷物を奪う犯罪がとても多いので、エンジンタイプも含めて、二輪車は全て規制の対象にされています。

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なのに、電動バイクを専門の店舗が堂々と販売していますし、江蘇省ほど多くではありませんが走っています。

(因みに、広東省では許可を受けてもエンジンバイクは125ccまでです)

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チューンアップやデコレーションをするショップも在って、出力を上げたり、バッテリーを増設したり、カラフルなLIDライトで眩く点滅デコさせたり、ロングダンパーやサスペンションを強化してタイヤを太くするような、外観デザイン自体の改造変形もしてくれます。

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多少の洪水でも走れます。

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防寒対策の専用風除けが売られています。

フルフェイスのヘルメットは安全意識より寒さ対策で被られています。

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よくコートやジャケットの表後ろを逆に着て寒風の入りを防いでいますが、うなじや背中が冷えないのでしょうか?

見た目はダサイですが、気にしてないですし、これは文化です。

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雨露を防ぐ雨天用のポンチョは、ヘッドライトを含むフロントファリングからハンドルにサイドミラーと電動バイクのフロントをほぼ全面に覆い、後方はタンデムの人に被せてシートの後端まで完全の覆う大きさです。

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冬季の防寒前盾の上から被せる事ができて、前面からの風雨で濡たり、凹んだシートに溜まる雨滴が染みて来る事も有りません。

基本は三人用ですね。

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ただ、雨露を防ぐ目的は確実に果たしているのですが、事故などの生死に係わる緊急時に速やか且つ安全に愛車から脱出・離脱でき難いという、重大な欠点が有ります。

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頭から被り顔を出すだけのポンチョですが、予期せぬ瞬間的な力で頭が抜けなかった場合、事故る愛車に引き摺られるままに潰されてしまい、大怪我を負ったり、命を失ったりしますので、それ故の覚悟が必要でしょう。

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また、体の前後に垂れる裾を引き摺るくらいの大きなポンチョは、とても歩き辛いです。

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寒さや雨を防ぐワイパー付きのハードトップというより、フルカバーの三輪タイプが増えて来ています。

これの四輪タイプも見掛けますが、いずれも自転車扱いなので無免許でOKです。

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三輪タイプと四輪タイプは荷台仕様でも全てバックができます。

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前面に透明スクリーンと雨と陽射しを防ぐオプションルーフを取り付けています。

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オプションルーフは、広げたり縮めたりできます。

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こちらは折り畳みができない雨天用ルーフ。

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八月初めの夕方に見掛けたアマガエル顔の電動トライカーです。

大きめなサイズですが、これも免許がいらないそうです。

勿論、エンジン仕様の大型トライカーも爆音を響かせて走っています。

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他にも、全体が御椀を伏せたような透明キャノピー仕様の四輪タイプを見ましたが、そんなのを何処で製作して、いくらで販売しているのでしょうね?

まあ、大勢とは違った事がしたいカブいている人はソコソコいるのですが、チマチマ走りが恥ずかしいのと低車高過ぎて危ない所為で、誰もマリオカートみたいのには乗っていませんね。

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充電は家庭のコンセント(中国は200ボルト/フル充電には一晩)から専用充電器を使って行えますし、それに有料の充電設備が町中のコンビニなどの店や小さな村の雑貨屋にも脇に接地されていて、普通は急速充電(10分間くらい)が安価な1元ででき、辺鄙な場所を長時間走らない限りバッテリー切れの心配は有りません。

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(バッテリーは着脱式でないので、充電場所によっては延長コードが必要になります)

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これは、電動バイクの簡易修理店です。

(※ この露店は、2017年12月に景観保全と歩行者の安全の為に完全撤去されましたが、暫くすると天蓋無しで営業を再開しています)

パンク修理、バッテリーの充電や交換、モーターや車体のメンテナンスなどを有料で依頼できます。

毎日、朝七時前から開店している個人の出張店で、歩道の角隅を勝手(たぶん、地域の警察に認可されていると思う)占居して営業しています。

街灯のポールに設置している二つの充電器の電源は、何処から取っているのだろう?

*この簡易修理店は、ポールの充電器設備を残して2017年3月末に治安警察に依って撤去されました。

(残された充電器が使えるとすれば、その売り上げは何処の誰が回収しているのでしょうね?)

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このような簡易修理店や便利屋は、毎日、中心街を除く市内のあちらこちらの勝手に占居している場所で営業しています。

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このキオスクにもワンコイン充電器が二つ置かれています。

(※ このキオスクは、2018年5月に景観保全の為に撤去されました)

店前に停めてある紺色の電動バイクは足漕ぎ兼用タイプで、バッテリーが無くなれば、自転車として充電設備へと人力走行できます。

(この足漕ぎ兼用タイプは安価で、1800元前後で販売されていますが、もっと安い1500元以下のも出て来ました)

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こちらは、ショッピングモール脇に設置されているワンコイン充電器です。

このように有料の簡易充電器は市内、郊外を問わずに、いたるところに有って、充電インフラの充実が図られています。

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新しい機種は全て輸出先での各国の二輪車輌の保安基準に適合する各装置を有しての、日本円で、25000円から85000円ほどの価格です。

それに比べて日本では、アシスト自転車や足漕ぎ兼用タイプの電動バイクでも、悲しくなるくらいに10万円以上とか、20万円以上とか、非常に高価ですよね。

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故に、非常に多くの人達が乗り回していて、車道と歩道の見境なく、逆走、無灯火、ウインカーの使用無し、信号無視は当たり前の如くです。

脇道からの飛び出しや路肩からのUターンや大型車の死角となる直前を横切るなど、左右へ顔も、視線も、全く向けない、安全確認無しで行います。
この無謀で非常に危険な行為に及ぶ原理は、列や順番に並ばずに割り込むという、この国では極当たり前の常識的な心理と同じなのです。

乗車する人数は1人から4人、更に足許に犬が伏せていのも見ます。

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気を抜いて歩道を歩いていると、後ろから真横を擦れ擦れに通って行く電動バイクに驚かされて、強盗殺人が多い広東省で禁止されるのは、至極当然だと身の危険で知らされます。

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当然、傍若無人の走行による車や人や電動バイクとの接触事故は多いです。

ですが、その数の多さに比べて事故は少ないと感じています。

その理由として、中国社会の日常的な予測できない行動から危険が有るという前提の防衛運転を意識しているからだと考えます。

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路面や混雑する交通状態から非情に自己責任のリスクが高いと思うのですが、簡易セグウェイみたいのや、その1輪タイプ、電動スケボー、ローラースケートで通勤する人は多いです。

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信号待ちをしている小学生が運転するセグウェイ。

兄が弟に操作を教えているらしく、隣に赤い上着を着てチャリで随伴しているのは、お父さんのようでした。

流石に小中学生が公道を走行させるのは違法で、罰金は200元です。

歩道で横断歩道の信号が変わるのを待つ人達に、『街中で子供に運転させるのは、危ないから止めなさい』と、注意されていたけれど、完全無視して行っちゃいました。

セグウェイは体重移動の操作と車体反応のレスポンスに僅かなタイムラグが有って、敏捷な方向転換はハンドルで行えますが、急ブレーキは操作性とイレギュラーへ反応する体の姿勢から難しいですね。

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道路交通の法規と標識は、幼稚園から教えなくてはなりませんが、小学校からは歩行者や自転車走行からだけでなく、更なる路上の危険性を察知させる為にも、自動車運転者側の法規や状態を教える必要が有るでしょう。

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横断歩道を塞いで俺様駐輪した電動バイクを強制撤去中です。

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青信号になるまで待たなくて横断歩道を渡るマナー違反者を、晒す大画面テレビです。
大体、10人中2人が勝手に横断しちゃいます。

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大抵は安全を確認して渡るのですが、交通が激しくても知らん顔で渡る強兵というか、無神経な輩がいます。
勝手に渡る連中の男女比は同じくらいで、人相的に教養が低そうな感じがします。

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無神経な奴等は、教養が否定されて悪となっていた個人と自由を弾圧した時代を経た、無学そうな年輩の方が多いですね。
(見るからにそういう方々は、車が行き交う危険な道路を幼い孫の手を引きながら、横断歩道も関係なく渡って行きます)

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主要道路の交差量の多い交差点の信号は、直進・右折(日本では左折)と左折(日本では右折)が、はっきりと分けられています。

左折は直進・右折の後で、15~40秒です。
左折の矢印は、直進・右折の時が赤色表示で、緑色に変れば曲がって行けます。

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赤色表示を無視して左折すると、交通監視カメラに撮影されて、最寄りの警察署への出頭と罰金支払い通知書が届きます。

撮影画像には車のナンバーと車種と運転者が高画質で鮮明に写り、特に運転者の顔写真は顔認証システムでIDナンバー其の他が特定され、動向も追跡システムで把握されますから、逃れる事は人民も、外国人も、非常に難しいです。

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直進・右折の時に左折車が交差点の中程まで進んで、停止待機する交差点が殆どです。
信号にオートバイの表示も有る交差点は、左折矢印に従って曲がる事が可能で、これは電動バイクも従わなければなりません。

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信号に従えば、交通はスムーズに流れて、衝突事故が起こらないはずですが、信号無視や逆送や左右後方未確認の電動バイクと、何処でも勝手に横断する左右後方未確認の歩行者の為に、交通量が多い時間帯は、停滞と接触と妨害でカオス(混乱)状態です。

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横断歩道への歩道際に設置されている金属製ポールや大理石の球形仕切りは、歩行者の安全を守る為ではなくて歩道上に駐車されない為です。
ですが、交差点内での衝突事故に因る弾みで飛ばされて来た車が止められていたのを見ているので、歩行者を守るのに有効だと考えます。

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私が勤務する工場の駐輪場です。

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狭い道では自動車の運転手が、車道にいる人や近くを走る電動バイクへ自分が通るから接近するなと、クラクションを通り過ぎるまで鳴らし続けます。

これは、クラクションを鳴らされているのが、自分だと気付かない人や電動バイクが多いからです。

気付かない、周囲に配慮しない、気配りが無い、察しが無い、それは、この国では普通の事で、老若男女、学歴の高低、生活レベル、地域性など、一切関係有りません。

電動バイクライダー達は道交法を知らないので、自動車のドライバーは交差点の信号が青色でも、赤信号側に電動バイクを見ると、その動きを警戒してクラクションを鳴らして減速しています。

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歩道を走る電動バイクも前を歩く人へ、クラクションを鳴らして避けさせます。

これも、突然に予測できない動きをする人が多い所為です。

『俺物語』より『俺様物語』の人ばかりですので、とても気を付けなければなりません。

この『俺様物語』、他人ばかりではなくて、悲しい事に自分もそうだと気付けてない人が非常に多いです。

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交通事故には非常に気を付けなければなりません。

電動バイクに乗る人の殆どが、公的機関や民間の自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)に加入していません。

自分が歩行者として歩いている時に、負わされる事故や負わしてしまった事故の怪我や破損の賠償は、大抵は折半になるか、交通弱者の歩行者としての被害者立場で少し優位な比率になるくらいです。

加速的に増加している自動車のドライバーでも、保険会社の任意保険に加入する人は、まだまだ少ないです。

医療制度が未発達なので、ほぼ全額の治療費や入院費が請求されますから、こちらへ来られる方は、海外でも適応する入院特約付きの生命保険に加入しておいて下さいませ。

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青い三輪タイプは頭金188元から、白いのは頭金108元からで、残金額を12回の分割払いにできるという意味でプライスカードに金額が記されています。

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このデザインは、人気が無いのか、ずっと走行しているのを見掛けた事は無かったのですが、業務車と他の取扱店が有りました。

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これはスクータータイプの三輪車で、後輪の独立したコイルスプリングがコーナーリングを安定させてくれそうです。

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こちらは、2018年モデルの電動三輪車です。
キャビンが広くなって視界も良く、運転がし易そうです。

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大きな荷物が積める後部には、二人掛けシートが装備されていますが、法律的には免許不要で運転できる電動二輪車も、電動三輪車も、電動四輪車も、一人のみの乗車しか許されていません。

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ですが、二人以上の乗車に対する警察の取り締まりは殆ど無くて、大抵は事故の当事者になってから多人数乗車への罰則と罰金が科せられます。

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フェンダーやキャビンなどの外観部品やパネルは、衝撃吸収設計になっているのか、自動車にぶつかる衝撃で電動二輪車を含めてバラバラに壊れて仕舞います。

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リサイクルして現金に成るペットボトルとアルミや鉄の缶が捨てられてないかと、ゴミ箱の中を孫に覗かせる三輪電動バイクに乗る御祖母ちゃん。
回収したリサイクル品を廃品業者へ持ち込んで現金を得る御祖父さんや御祖母ちゃんは多く、孫へ小遣いとして分け与えています。
でも、この場面的には、この女の子へは小遣いとしてではなく、労働対価だと思うのでした。

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これほど電動バイクが増えても、保証金200元で手に入るカードを翳すだけで利用できるシェア自転車が普及していても、冷暖房完備の市バス(モニターで後方視界を確認するハイブリッドバス)やタクシー(スマホアプリの配車システムが普及しているし、同様に配車できてサービスの良い白タクグループもある)の利用が減っている現象は有りません。

なぜなら、バスの市内料金は1元、タクシーの基本走行距離が10元(白タクグループは割引キャンペーンもしている)と安価だからです。

(市内のバス停の屋根縁には、炎天下のバス待ちでの熱中症対策の霧降り装置が完備され、昼間は10分間隔で2分間の噴霧を行って、バス停に淀む熱を霧が蒸発する気化で冷やしています)

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上海で運用されているスマホのアプリで利用できる『何処でも乗れて何処でも乗り捨て』のシェアサイクルです。

イエロー、ライトブルー、グリーン、レッドとホワイトのツートンとカラーリングはカラフルです。

身近なシェアサイクルの位置がスマホの地図に表示されて、サドル下の後輪ロックを解除して利用します。目的地に着けば、其処で乗り捨てOKです。

デポジット(保証金)は300元で、スマホ決済され、この際にも本人確認がされます。

シェアサイクルは、ソーラーバッテリー蓄電のGPS内蔵で位置を知らせています。

これまでのロック管理するステーションの設置は不要です。

中国では携帯電話を購入する際に、顔写真と身分証明書が写真に撮られて本人確認と管理センターに登録されます。

なので、利用違反する人には罰金を課せられますが、それでも乗り捨てのマナーが悪いです。

車道や歩道塞ぎや店中への転がし乗り捨て、悪戯での全損破壊や投棄、ロックを物理的解除しての俺様利用、GPSを作動不良にして自分専用ロックを付けてしまうような盗難(マウンテンバイクが800元、ファットバイクが1500元で買えるのに)など、まだまだゴミのポイ捨て感覚の心無い人が多いですね。

だけど、このようなマナーの悪さは、日本でも同様に発生するでしょう。

この国のマナーを守れないというか、意識の無い人の割合が多いのは、圧倒的な人口の多さと道徳観念の少なさ(そもそも、して良い事なのか、悪いのか、そのボーダーが薄くて低い)の所為だと思っています。

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こちらは、出張先の山西省の晋城市でのシェアサイクルと三輪電動カーです。
丘の上の晋城の街は長い坂道が多いので、乗り捨てシェアの電動アシストサイクルが普及しています。

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ステーション式のシェアサイクルのロックホルダーは、両側からの挟み込みタイプで、盗難が多いと察しられます。

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社会のモラル事情から防衛運転の走行スピードは遅いというより、飛ばせません。

(重量超過車による、罅割れて波打つ路面状態も関係していますし、施工不良の段差に減速ハンプも多い。それに違法駐車だらけです。歩道はタイルブロック張りが多用されていますが、デコボコして歩き難いのと勝手に店先利用や駐車場化しているので、皆は車道を歩きます)

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運転意識とマナーは、道交法を守り、互いが優先区分を認識して走行する日本とは、大違いです。

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ですが、高低差が多い日本の道路で走らす事ができれば楽で便利だと思うのですが、気軽に購入して日常生活に使用するのは難しいのでしょうか?

自転車が車道を走行しないと取り締まわれるようになった現在、法的整備基準を満たしたローパワー(定格出力0.6kWまで)の電動バイクが、道交法と走行マナーの教習を受けるだけで運転を許可されるようにならないのでしょうか?

(日本では、ローパワーの電動バイクは原付バイクと見なされて運転免許が必要で、自賠責保険の加入、軽自動車税の支払い、ヘルメットの着用が義務付けられています)

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ローパワーの電動バイクは、自転車よりも低重心で低速だから、運転免許を必要としなくても自転車より安全に走行できると考えますね。

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中国と同等な価格で販売しても、大きな経済的効果が見込まれると思うのですが……、地球温暖化問題で二酸化炭素増加防止の意味合いも有るのに、いろいろと官制や経済関係絡みで実現しないのだろうなぁ。

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PS 01:

昆山市で見掛けた大型バイク(エンジンタイプ)と、三輪の簡易タクシー仕様と、日本の軽自動車よりも小さい公認電動カー(普通車の運転免許が必要)です。

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深夜の閑散とした大通りを高々とエキゾースト・サウンドを響かせて、族っぽく大型バイクで走り回っているライダーもいますが、都市部ではエンジン仕様のオートバイは、殆ど走行していませんし、売れていません。

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このエンジン仕様の四輪バギーはロシアの自動車メーカーのVadim(ヴァディム・シュベツォフ)製でしょうか?

 

PS 02:
警察で使用される電動小型車両

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交番の巡査が使用している警邏仕様の電動バイクです。

これでラッシュアワーに管轄の大きな交差点へ行き、交通整理をしています。

この街のお巡りさんは、誰も足漕ぎ自転車を使っていません。

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地域巡回と喧騒地区の防犯で使用しているバギーパトロールカー。

(ガソリンエンジン車です)

結構カッコイイですが、このようなオープンタイプは車輌規定の厳しい日本で採用されそうにないですね。

ですが、マイナス4℃の真冬日のパトロールの任務は厳しそうですね。
このタイヤトレッドでは凍結や積雪の路面で、スリップとドリフトしまくりかもです。

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2018年1月の出張で利用した河南省郭州市の空港ターミナルで、空港警察が使用している電動カーです。

 

PS 03:
タクシー仕様の電動小型車両

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このタイプは、電動の三輪タクシータイプ。

無許可の白タクですが、ギルドみたいのを作っていて、半公認みたくなっています。

許可制にして登録ナンバーを付けさせている市町もあります。

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スピードメーターは出せるはずもない120km/h表示ですが、これも運転免許がいりません。

もし事故に遭われても、被害の保障は不明ですので、乗車される場合は、そのリスクの覚悟と海外でも適用される生命保険の加入をしておいて下さい。

外国人だと知られると、5元の距離を20元だと言い張るような、ぼったくりもいます。

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人力の旧車に電動機を付けて、切換えで足漕ぎ走と電動走を可能にしています。

この旧車からの改造仕様や電動三輪の簡易タクシーは、タクシーの少ない地方の中小都市に多いです。

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エンジンタイプの三輪簡易タクシー。

後面にナンバープレートが付いています。

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必ず行き先を告げて値段交渉してから乗車します。

大抵は通り名と建物(例えば、南京路の○○百貨店とか、北門路の第三市民病院とか)を言えば、狭い裏通りなどを通る近道をして行ってくれます。

 

PS 04:
荷台仕様の電動小型車両

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商業車仕様の三輪電動車。

座席の下にバッテリーが入っています。

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郵便局の小包の配達は足漕ぎ三輪から電動車に換わりました。

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屋台も人力曳きやエンジンの三輪より電動車仕様が多くなりました。

 

PS 05:
行政で仕様される電動小型車両

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路肩に設置されている四角いゴミ箱の中身を半自動で集めるゴミ収集車です。

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こちらは四角いゴミ箱とゴミ箱の設置場所を噴流水で洗浄する機能を搭載した電動車です。

半自動ゴミ収集車と噴流洗浄車は、どちらも地区単位で多数が運用されていて、毎日早朝から夕方まで定期的に周回しています。

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地域のゴミ収集施設は表通り以外の街中に点在しています。

一次回収の集積場所で、ゴミを圧縮して四角い塊にしますが、ゴミの散乱も無く、余りゴミ臭く有りません。

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市の衛生局が運用している路肩清掃用の四輪電動車です。
通り過ぎた後の路肩は、綺麗にゴミ屑や枯葉が収集除去されています。
フロント周りが前面ガラス張りで、直前の路面状態を確認できる視界が確保され、運転ポジションも前方高めになっています。

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そのうちに、『レールガンの学園都市』のゴミ拾いロボのように自動運転で管理運用されそうですが、それを阻むのは路上駐車でしょう。
毎年、倍化の勢いで増え続けている自動車台数ですが、購入時に車庫証明は不要です。
結果、駐車場を確保しないまま車を保有するので、駐車は路上、二輪専用路、歩道、植え込みへとなっています。

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車の重みで凸凹にされた化粧タイル張りの歩道は、ベビーカーを押したりやキャリーバックも転がせず、そして、駐車や作業場で塞がれる歩道に、歩行者は車道を歩く始末です。
当然、交通事故多発です。

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PS 06:
軽自動車サイズの電動車両

これは、運転免許が必要なエレクトリック・カー。

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自動車登録番号票(ナンバープレート)が付けられています。

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後部の車体下部に駆動モーター?が見えます。

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普及し出しているエレクトリック・カー。

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PS 07:

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高速道路上をタンデムシートに女性客を乗せて疾走するバイクタクシー。

高速道路を走るオートバイは余り見ませんが、このタンデムして安全性の無さはOKなのでしょうか?

(時々、電動バイクも走っている)

豪儀な女性客は全く余裕の感じでした。

 

 PS 08:余談01

交通事故から事件への注意喚起:
交通レールを守る自転車ライダーへの、唖然とする自動車ドライバーの暴挙の顛末。
電動バイクが絡む事件では有りませんが、自転車に追突した自動車のドライバーがライダーに難癖を吐けて刃物で殺傷しようとした挙句、逆襲されて殺されてしまった事件です。
自覚しながらのコツンと接触したくらいの些細な追突事故が発端ですが、同様な逆襲に因る殺人は、煽り運転や因縁付けでも、起こり得るでしょう。

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日時:2018年8月27日 午後9時36分~
場所:中国江蘇省昆山市開発区震川路と順帆路の交差点角
自転車ライダー:於氏 男性 41歳
自動車(BMW)ドライバー:劉氏 男性 36歳(表裏紋紋のヤクザ)
他、当事者:自動車の後部座席の男性と、助手席の女性

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追突、難癖、暴行、刃傷沙汰、逆襲、刺殺、の経緯
片側三車線の道路で、後方から中央車線を走行してきたBMW車は、交差点の赤信号で停車する大型バスがいたので、路肩側の車線へ変更しようとしたところ、路肩側の車線を走行していた自転車に気付いて、一旦は停止しました。

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ところが、停止は、自転車を先に交差点へ行かせてから進むつもりかと思いきや、一瞬だけで、BMW車は前進して自転車へ追突しました。
追突は軽く当たった程度で、車とBMW車は停止しました。

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振り向いて追突して来た車を見るライダーに、BMW車の後部座席から降り来た同乗者の男性が、謝りもせずに、自転車が邪魔だから歩道の上へどかすように言います。
更に、助手席から降りて来た女性が、納得の行かないレイダーと男性が口論する隙に、自転車を歩道へ移動します。
自転車をどかせてからBMW車は、歩道側車線を交差点の赤信号を無視して突き切るつもりだったようです。

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ライダーは、謝罪の言葉も、自転車の修理代の支払いも無く、勝手に自転車をどかす理不尽な行為に、男性と女性に怒りの文句を言います。
怒るライダーに男性は、示談にしようと宥め始める、其の時、BMW車からドライバーが降りて来て、怒鳴りながら、歩道上のライダーに殴りに掛かります。
ドライバーは飲酒運転の酔っ払いでした。
しかし、体格の良いライダーは、顔面などに数発のパンチを受けても怯まず、被害の保障を要求します。
その、怯みも、逃げもせずに、謝罪と保障を要求するライダーの、真っ当な態度に、激怒したドライバーはBMW車へ戻って、刃渡り43cmの蛮刀を持ち出して来ます。

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右手に握られた蛮刀を見ても、逃げもしないライダーに、怒り心頭のドライバーは、行き成り振り翳して、ライダーに切り付けます。
二回、三回と、マジな勢いで切り付けますが、空振りや躱わされたりして、負わせた切り傷は浅く、致命傷には至りません。

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そして、四度目の切り付けで、重い蛮刀の振り回しで疲れたのか、晩飯に食べた中華料理で手が油塗れだったのか、酔っ払いでバランスを崩したにか、ヤクの常習でラリ気味だったのか、蛮刀は手からスッポリ抜けて、車道に落ちて転がってしまいます。

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直ぐにドライバーは蛮刀を拾うとしますが、あたふたする酔っ払いの動きよりも、体格の良いライダーの方が速く、蛮刀を握ります。

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それからは、自分を殺そうとしたドライバーへ切り付けて、BMW車へ、BMW車から脇道へと逃げるドライバーを執拗に負い掛けて切り付け、とうとう出血多量でドライバーを死なせてしまいました。

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このドライバーを死に至らせる執拗な刃傷沙汰は、過剰防衛と執られ勝ちですが、結果的に、ドライバーは暴力団組織に組みする傷害前科多数のヤクザだったで、後々を考えると、殺して於いて正解だったでしょう。

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この理不尽なヤクザの暴力行為への異例の反撃殺傷事件は、忽ちインターネットへ前後2方向からの防犯カメラ映像が公開されて、ヤクザの素性も暴露され、正当防衛の是非を問うなどの社会的問題になりました。

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事件の顛末:
逆襲した於氏は、正当防衛が認められて、無罪+社会的な悪を葬ってくれたと表彰。
死亡した前科者の於氏へは、自業自得の上、飲酒運転、交通法規違反、追突事故、於氏への治療と保障と慰謝料の支払い。

 

中国の司法の裁定は、怖いくらいに、とても速いです。
即刻、即決、即執行。
街の何処の通りにも、暗夜でも顔認証可能な高性能の防犯カメラが一杯です。
(テレビニュースやインターネットへ公開される画像は、ワザと解像度を粗くしています)

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PS 07:中国事情の参考

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中心街で時々利用する人力三輪タクシーです。

転たり、車にぶつけられた時の保障は、全く有りませんが、安くて地域に詳しいです。

それに、ちょっと面白くて楽しいです。

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全然、電動バイクとは違いますが、藤椅子の運び屋さんです。

藤家具の製造工場から市内各所の家具屋へ配達しています。

リヤカーに施した、軽量な藤家具を大量に運ぶ為の改造と工夫を感心して見ていました。

細かい擦り傷が付きそうですが、トラックの配送業者よりも、ずっと丁寧な扱いで運びます。

 

 PS 08:余談02

中国のPM2.5大気汚染について:

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酷い時にはウインターホワイトの白い靄が覆って視界が百メートルほどになってしまう、粒度PM2.5の煤煙に因る大気汚染。

そんな日の朝は、輝きのない夕陽のような赤い太陽が昇ります。

大気汚染PM2.5の靄や霧は、こちらでは霧霾(ウーマイ)と呼ばれています。

白く立ち籠める霧のように淀み漂う、煤煙で汚れた大気という意味ですね。

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私が居住する江蘇省の揚子江デルタ地域では、去年(2016年)の春先から秋口まで霧霾が頻繁に発生して、秋に天高く馬肥える空を見られるまで安堵できませんでした。

そして、今年(2017年)はもっと酷くなるのかと憂いて憤っていたのですが、予想に反して発生する日が滅切り減って、くっきり地平線まで見える日が多くなりました。

夜空も澄み切り、春先までオリオン座や太陽系の惑星が良く見えて驚いていました。

PM2.5の大気汚染を発生させる主な原因は、自動車の排気ガスでも、火力発電所でも、練炭でも、有りません。

それは、沿岸地帯と奥地の砂漠地帯の間の山脈と高原地帯に在る無数のセメント工場と関連産業です。

主要都市の周囲の郊外に囲むように林立する高層マンション群、網の目のように整備される高速鉄道網や高速道路、増設される地方空港、各地で頻発する田畑や丘陵を平坦な更地にして工業団地に転換する開発事業、これらに大量の鉄骨、鉄筋、コンクリート、アスファルトは欠かせない建設資材です。

その建設資材の原料は山脈地帯の鉱山で採掘されて、近郊都市の環境保全設備の意識が無く、大気汚染防止設備を施さない工場で昨年まで大量に生産されていました。

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それが、計画されていた開発やインフラ整備が整え終えられ、新たな事業規模は小さくなって、大量に生産する必要が無くなってしまったのです。

それに伴いPM2.5の大気汚染が減少したのでした。

決して浄化の設備投資を徹底したからでは有りません。

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現在、高層マンション群は過剰供給の飽和状態で、建設ラッシュは過ぎていますが、その高価過ぎる価格と位置的環境の不便さで

入居者は少なく、空き部屋が目立っています。

それでも、都市を取り囲む高層マンション群構想は国家事業なので、バブル崩壊のトリガーと成りかねない販売価格の値下げが出来ない状況です。

また、地域開発事業の減少の所為で建設産業の失業者が一気に増えるのではないかと考えています。

ともあれ、大気汚染の減少と増大する電動車輌に、広大に整備されている風力とソーラーの発電設備は、パリ協定での中国のCO2削減率を以外と容易くクリアさせるかも知れませんね。

でも、バブルが弾けての経済の停滞や衰退で大不況になるは御免被りたいです。

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2018年1月、山西省南部は、まだまだ土地の開発やインフラ整備の最中で、大気汚染が治まっていません。

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この真冬の中原の地は、細雪のような氷の粒が降る零下8℃前後の乾燥した日が続きます。
氷の粒は大気中のPM2.5の微粒子を付着させ、凍結する地表も降り積もる大気汚染粒子を付着させます。
そして、靴裏のトレッドに挟んだ細雪は融けると、PM2.5の微粒子で黒い泥水になります。

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PS 09:余談03
中国のメロディロード(音楽公路/ミュージックロード)

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舗装道路面の細い横溝の上を走行中の自動車のタイヤが通過する際の擦過音を、多くの横溝でリズム化して曲を奏でさせる道路のミュージックロードが中国にも現れました。

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曲を奏でる路面の道路は日本に30箇所ほど在り、『メロディロード』の名称で開発施工会社が商標登録をしています。

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中国での名称は『音楽公路/ミュージックロード』で、施工された道路の場所は不明ですが、280mの施工距離を40km/hで走行すれば、28秒の間、曲が奏でられます。
曲名は『祖国』という、『我等の親愛なる祖国』を讃える勇ましい曲です。
舗装は五線譜を模した4色の帯と白線の仕切りに、アスファルト色の音符が描かれて、とてもカラフルです。

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この曲を奏でるカラフルな路面は、単なるリズムを聴くだけではなくて、長い直線区間の始まり部分、中央部分、終わり部分や急カーブの手前の直線部分、トンネルの手前とトンネルの出口の部分、車間確認区間、料金所の手前、水捌けの良くない場所、などの多くで、安全運転意識の喚起やスリップ事故防止に施工して貰いたいと考えます。

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PS 10:余談04
日本の素行の悪いドライバーの運転が世界へ拡散されています。

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マナーを守ってゴミの無い美しい街に暮らす素行が良い日本人にも、自分勝手な人はいると、そんな自己中の人達を盗撮した動画が海外のインターネットで配信されています。

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参考の1例ですが、画像に写る明るい緑色の車両のドライバーは、歩行者が横断歩道で一時停止をせずに間隙をノーブレーキで通り、交差点での左折も減速する事なくノーブレーキで、逆に加速して曲がって行きます。

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更に、赤信号での停車時には、運転席の窓から紙屑らしきゴミをポイ捨てしています。
バックミラー越しに撮られているドライバーに目線を入れていますが、実際に配信されている動画には目線は無く、素顔を晒されています。
(車両、ナンバー、会社名、風景などから、簡単に本人特定が可能ですね)

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他の悪例の動画では、タバコの投げ捨て、ドアを開けて灰皿の吸殻ゴミを捨てる、雑誌やドリンク容器や食べ物容器のポイ捨て、などが配信されています。

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これらの不道徳さは、『通りにゴミが捨てられていない綺麗で清潔な日本』、『マナーの良い誠実で大人しい日本人』などの模範的イメージを意識して来日する外国人にとって、想定外の驚愕すべき事実で、思わず『悪質な日本人/悪者』と決めつけて、ストーカーしながら『更なる不道徳をしないか』と動画撮影しちゃうのでしょう。
外国人観光客が増えている今日、何時何処で自分の悪しき行為が盗撮されているか分りませんね。
己の恥を世界中の人達に晒されないよう、愚かしい行為は慎みましょう。

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また、レンタカーで自国感覚のドライブをする外国人(必ずしも国際ライセンスを取得していなくて、無免許者もいる/外国人歩行者にも注意)が多くなって来ていますので、相手が交通マナーを守らない想定する防衛運転に心掛けましょう。

キスチョコ・クラシック

初めてキスチョコを食べたのは、幼稚園の頃だったと思います。

親父の弟で国際航路の貨物船の機関士だった叔父さんが、七尾港や神戸港に帰港するたびに実家を訪れ、私と妹への御土産として、よくキスチョコを持って来てくれていました。

そのキスチョコは、日本のチョコレートとは違う甘さが気に入って、直ぐに好きになりました。

けれど、たくさん食べると鼻血を出すとかで、毎日の食べる数は袋ごと保管する母と祖母によって、ずっと制限されていました。

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叔父さんは年に二度くらいしか実家へ寄らず、また航路によっては寄港先にキスチョコが無くて、持って来ない時も有りましたが、中学三年生ごろまで続いたキスチョコの御土産を、いつも心待ちにしていました。

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その後は、そのキスチョコの味覚が忘れられずに、大手デパートや量販店やインポート食料品店などへ行くたびに探していましたが、有りませんでした。

中国に常駐してからも、大都市や香港のショッピングモールで探しましたが、見付かるのはどれも新パッケージで味が違います。

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四輪駆動の大きなレンタカーを自損事故してしまったハワイ島でも探しましたが、立ち寄った店では取り扱っていなかっただけなのか、見付けられませんでした。

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それが、一時帰国時に会員になったコストコで、とうとうノスタルジーのキスチョコを見付けたのです。

探していたのは、キスチョコのミルクチョコレートでクラシック(伝統的)なパッケージのモノ。

甘さと味は、思い出のイメージのままでした。

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でも、袋に入っている量が半端なく、330個入りで重さが56オンス(1ounceが28.53gなので、1.58㎏)も有り、アメリカの商品だと実感します。

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ミルクチョコレート名は新パッケージにも有って、紛らわしいので勝手にキスチョコ・クラシックと呼んでます。

パッケージを開くと、日本のチョコレートと違うキスチョコ独特のミルク臭が香ります。

新パーケージとクラシックでは、味も、この個性的な臭いも、違います。

纏わり付くように漂うキスチョコの強い臭いを避ける方もいますが、クラシックの香りと味が気に入っています。

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キスチョコのメーカーはハーシーズ、ハーシーズのチョコならアメリカ兵。

ならば、アメリカ軍の基地近くでアメリカ兵の家族御用達のスーパーにも有るかもと、沖縄へ遊びに行ったついでに立ち寄った嘉手納基地前の店でも見付けました。

そこには、コストコで手に入れた大容量タイプの1/6の量(260g/55piece)で、サイズ的に御手頃な大きさの袋入りのみが有りました。

沖縄へは時々行くのですが、それまでキスチョコを探すという発想はなく、サイパンでも探していませんでした。

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兎に角、ずっと探していた思い出の味が見付かって、とても嬉しいです。

キスチョコは、変わらぬスライムみたいな形とメタリックな包み紙で天辺にフラッグのように翻る、白地にスカイブルーで KISSES® のロゴが入るリボンがキュートですね。

一時帰国する際には、必ず購入して、こちらで毎日少しづつ食べています。f:id:shannon-wakky:20160522200514j:plain

キスチョコの名の由来は、製造ラインでコンベアの何処かが擦れ動く音や、チョコをキスチョコの形に搾り出す音が『チュッ』と鳴ったり、キスしているように見えたりするからとか、キスチョコを口に入れる時の唇がキスをする時の形になるとか、言われていますが、定かでは有りません。

私的には、トレジャーハンターがダンジョンの奥深くでメタルスライム系のチョコを見付けて、感謝のキスをしてから食べるってイメージかな。

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PS:

中国のスーパーで売られているキスチョコのリボンのロゴは、青色の KISSES の文字に加えて赤色のも入ったり、中国語の『ありがとう』『甘いよ』『いいよ』『頑張れ』『愛してる』などの漢字もプリントされたりしています。

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これは、日本の正月時期に北陸で売られている、短い御神籤の言葉が記された小さな和紙を薄い餅片の中に包んでいる辻占菓子と同じ発想かもですね。

苔の里 (癒しの空間/気分は光合成) 石川県小松市日用町

秋篠宮家の長女眞子さまが2015年11月3日に御越しになって、優しく微笑みながら「フワフワですね」とおっしゃられた、石川県小松市日用(ひよう)町の苔群生地を歩いて来ました。

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枝打ちの手入れをされて真っ直ぐに育てられた日用杉の木立から差し込む、木漏れ日に包まれていると、この苔に覆われた悠久の地に、叡智のオラクルが降りて来そうな気がします。

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日用 苔の里の場所は、石川県加賀地方の粟津温泉から山城温泉へ向かう幹線道路から、途中に在る観光施設ゆのくにの森の横の道へ入り、擦れ違う車も無く寂しい里山風景に、「もう引き返そうか」と思う気持ちを我慢して進んだ所に在ります。

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道の両側に僅かな家屋が建つ世帯数七軒の小さな集落に、「ここなのか?」って疑っちゃいますが、『苔の里』や『日用町Ⓟ』の案内板が有るので、間違い有りません。

梯川(かけはしがわ)沿いの瀬領町に至る道沿いに在る家屋は日用の集落だけです。

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童謡『ふるさと』の歌詞とメロディーを思い出させる哀愁的で美しい里山風景の日用町は、全国農村景観百選に選ばれています。

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平成28年(2016年)1月14日の『人』をテーマにした『歌会始の儀』で、眞子さまが『日用 苔の里』を題材とした歌を詠まれた記念に、歌碑『広がりし 苔の緑の やはらかく 人々のこめし 思ひ伝はる』が建立されています。

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パーキングは無料で、トイレも備わっています

鑑賞コースの散策される方は、苔の里の維持管理の協力に500円を御願い致します。

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苔の里の鑑賞コースが設定されているエリアは、日用神社を含めて地元の方々の私有地ですので、コース以外や民家への立ち入りはできません。

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コースは道路を横断していますから、通行車両に注意して下さいませ。

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鑑賞コースとして開放された民家の庭や神社の境内に群生している苔は、住民の方々が長年に渡り、育成、管理して来ています。

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春は積雪で痛んだところを植え替え、嵐の翌日には降り落ちた折れ枝や木の葉を掃き、育てている苔を新たな場所へと植えて、少しづつ鑑賞エリアを広げています。

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苔庭のウマスギゴケ、シノブゴケ、ヒノキゴケなどの多様な苔が綺麗な絨毯状に育つには、年月を掛けた人の手入れと慈しみが必要ですので、苔の剥ぎ取りや踏み付けはしないで下さい。

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いつか、苔と清水が調和するシシ神の森の水場みたくなって、蛍川か、虹色ほたるのように蛍が群れ飛んで欲しいですね。

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PS 1:

鑑賞コースの近くには、立派な一本杉が聳えています。

どれくらいの樹齢なのでしょう?

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PS 2:

日用町に至る手前の交差路を右手の南方向へぐんぐんと山奥へ進んで行くと、岩肌から癖の無い美味しい清水が湧き出ています。

この「観音水」と銘が有る湧き水は円行山の山の頂上近くに在るので、どこからの水脈だろうかと不思議に思いましたが、たぶん、白山からの地下水脈がサイフォン現象で湧き出させているのでしょう。

この山は、1250年前に泰澄(たいちょう:682年7月20日 - 767年4月20日)法師が白山山中で体験した自然智(じねんち)の世界観を、那谷寺の行者達が体得する為の求聞持(ぐもんじ)法を修行した地です。

自然智は、森羅万象を知り得る光が己の身体に飛び込んで来るという悟りの体現です。

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ここからは、柴山潟に片山津温泉、そして日本海が眺望できます。

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大清水(金沢市笠舞一丁目)

何時? 誰が?『大清水/おおしょうず』と名付けたのか知りませんが、此処でよく遊んでいた子供の頃は、連れ立った幼馴染も、地元の人達も皆、『大』を付けずに『しょうず/清水』と言っていましたね。

犀川の河岸段丘の中段に位置する直角三角形の形をした大清水の湧水池は、直角に接する二辺が高さ2mばかりの石垣で、斜辺の部分は池縁へ下りる階段と躑躅や紫陽花が植えられていた斜面です。

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大清水への出入りは、善光寺坂を下り切った所の民家脇の細い未舗装の路地だけで、この路地の状態は今も同じです。

大清水自体や大清水に至る路地の雰囲気は、遊んでいた五十年前と殆ど変わっていませんが、路地口に在った鍛冶屋と紙屋は廃業して在りません。

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斜辺側と向かいの石垣側には石材をコンクリートで繋げた洗濯場が設けられていて、当時は石垣に何枚も掛けられた大きな木板に列記された地元の家長名宅の御姉さん達が、汚れた衣類を篭に詰め、小さなタライに洗濯石鹸と洗濯板を入れ、肩が触れそうなくらいに並んで洗濯に大清水を利用していました。

洗い場の何処で何をしても良いという訳ではなくて、下手は洗濯に、上手は仕上げの濯ぎをして絞るという、利用者達の取り決めが有りました。

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当時の利用者達は大清水周辺の三口新町の西外れの住人と、善光寺坂や立坂や建設資材置き場の葛篭坂を上り下りして来る段丘上段の上野町や上野本町の人達でした。

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稀に夕方に洗濯に来る方がいましたが、洗濯する御姉さん達の時間帯は午前中で、平日に子供達が遊ぶ午後と重なる事は無かったです。

ただ、日曜日や祭日、それに夏休みに水を濁らせて何度か、叱れていたのを覚えています。

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大清水の笠舞町側は水田と畑ばかりで、宅地化の道路整備が成されても長い間、住宅は建ち並びませんでした。

三口新町側には民家の庭と養魚の池の並びと広い葡萄畑が在りました。

(現在、養魚の池は殆どが駐車場になり、葡萄畑はショッピングセンターと賃貸住宅や幹線道路によって、ずっと狭くなりました)

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宅地化の道路整備が為される以前は、大清水への小道が段丘下の上菊橋へ至る唯一の道でした。

小道は、牛首の集落(錦町)や上野町、涌波町や三口新町、更に山手の住民達が、笠舞方面や寺町台地へ行く最短コースの重要な道路だったのです。

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平坦な砂礫の底面と浅い水位の大清水は小学生に遊び易く、暑くなる初夏から残暑の初秋まで放課後は家にランドセルを置くと、必ず来ては夕暮れまで水遊びをしていました。

直角に接する石垣の際の水中には、鮮やかな朱色の腹面で背面の真っ黒なイモリが多く棲んでいて、よく捕まえていました。

他にも、船の模型を作ると大清水に来て、イモリを乗員にして進水式をしてましたね。

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大清水の流量が減る以前、この辺りには多くの湧水が在りました。段丘上段から中段への急斜面は斜面途中や斜面際から水田を満たせるくらいの流量が出ていましたし、段丘中段面上の僅かな段差際にも多くの湧水が小さな池を作っていました。

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笠舞町側の宅地化の後に三口新町側も宅地された時は、立坂の右脇斜面の竹林と放牧場が削られて石垣が組まれ、宅地造成と道路を通されましたが、造成直後の梅雨の長雨が降る或る日の早朝、長さ100m近くの石垣の全てが滑り落ちるように崩れてしまいました。

幸いに崩れたのは石垣の厚みだけで、斜面上の住宅や住人に被害は無く、横の立坂の階段も崩れず、崩れた石垣が造成した宅地の敷地内で留まったので、斜面下脇の住宅並びにも被害は有りませんでした。

石垣が崩れた原因は、水脈と湧水量を調査不足で排水が不十分だったのと、僅か10m余りの高さなのに湧水量を軽視した一段積みの石垣の強度不足に有りました。

剥き出しになった粘土質と砂礫が層になった崖のような急斜面の二次災害を起こしそうな事態に、急遽修復された石垣は、二段積みにされて多くの排水穴が施され、以後五十年近く経た現在も不安は有りません。

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大清水の石垣際から湧き出る地下水の殆どは、周辺上流域の犀川河岸段丘中段の笠舞段丘の小立野三丁目、三口新町、涌波町、大道割町、大桑町や、最上段の小立野台地の上野町、上野本町、小立野一丁目、錦町、土清水町と、更に上流域の永安町、末町、舘山町辺りからの浸透水が湧き出ています。

(涌波町から笠舞町までの多くの湧水は、1632年寛永9年)に板屋兵四郎が小立野台地上へ犀川上流から金沢城まで通した辰巳用水の完成で、新たな湧水の出現と、それまでの湧水は水量が増えたといわれています)

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ですが、大清水辺りから永安町の斜面まで見通せて点在する集落だけの田畑や野原の広がりは、都市計画によって区画化された宅地になり、畦道は側溝付きの幹線道路や生活道路になって全て舗装されました。

台地上の辰巳用水から分水されて滝のように落水する渓谷や湧水からの小川と用水も、辰巳用水を含めて全てコンクリートに固められました。

それに環状道路や導水路も台地の最狭部を貫通しています。

其の為に降雨や降雪による浸透水は激減して、現在は周辺の多くの湧水が枯渇して大清水の湧水量も半減しています。

今後、段丘斜面の竹林や雑木林、大桑町と錦町の調整地域が宅地開発されれば、近い将来に大清水は枯渇してしまうでしょう。

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湧水が枯渇しないように、斜面の緑地は保護して広い緑地帯や公園が在る開発を行って下さるよう願っています。

また、広い金沢大学工学部跡地の利用については、大きな緑地公園を有して浸透水を確保できる施設でと望んでいます。

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大清水脇の立て札の説明には、別名称に『はなかけ(鼻欠け)清水』が有り、鼻が捥げるほどの冷たい湧水だったから『はなかけ』と呼ばれたと記されています。

ですが、古書の元文二年(1737年)の記録に『鼻かけ清水』は亀坂の下より少し上の方に在りと記載されていて、この『少し上(うえ/かみ)の方』が坂道の途中なのか、亀坂が在る台地の斜面を北西の海側ではなくて南東の山側へ少し移動した場所なのか、よく分かりません。f:id:shannon-wakky:20160225070754j:plain

甚だしい冷気で鼻が欠けるのは、かき氷を食べて頭がキーンと痛むのと同じくらい冷たかったという意味でしょう。

一年中を通して鼻が欠ける冷たさだと、地下の冷気の風脈に浸透水の氷穴ができて、そこからの流れ出ていたのかも知れません。

そして、元文二年以前から存在していた南東方向の善光寺坂までは亀坂から540mも離れていて、更に善光寺坂を下りた所の大清水は680m離れています。

大清水の水温は常に14℃。

流量が多かった頃、水温と外気の温度差の大きい日には水面を薄い靄が覆っていました。f:id:shannon-wakky:20160225070852j:plain

故に、古蹟志に載る『鼻かけ清水』は『大清水』とは違う場所の湧き流水と考えます。

(その亀坂の渓谷に在ったのかも知れない氷穴は、中世期の乾燥して行く台地に風脈が塞がって湧水も涸れてしまったのでしょう)

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ゆらゆらと水面が波打つほど奥の石垣際から湧き出ていた地下水は、流量が減った現在、水鏡の様に静かで水面に揺らぎは見えません。

その衰えた流速に下がった水位と、生活様式の変化もあって洗濯には利用されなくなりました。

流量の多かった以前も湧水口の脇や池隅の流れの淀む部分に藻は繁殖していましたが、流れに漂って洗う衣類に附着する事は少なかったです。

清水で遊んでいた子供の頃、梅雨の終わりや残暑が続く秋口には洗濯に来た年輩のお姉さん達の依頼で、淀みに水中のジャングルのように繁殖した藻群を水底の砂礫の苔取りも兼ねて、裸足の摺り足で清水中を歩いて流し回っていました。

浮かせた藻や濁りは流れの巻かれて十五分足らずで、くっきりと透き通った綺麗な清水に戻っていましたね。

流量が半減して流筋が細くなった現在は、藻に変わって緑鮮やかな水蘚がアクアリウムのように繁殖して、

清水は洗濯に使えなくなってしまいました。

(ここで繁殖する水苔は綺麗なので、販売できるかもです)

そんな水中の植物変化で既にイモリは棲まなくなっているのか、探しても見付かりませんでした。

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洗い場を濡らしていた水位も下がって、現在は13cmです。

水質は今も飲料に適しているのか知りませんが、クレソンが自生するくらい清涼です。

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PS 1:

大清水近くの善光寺坂の名の由来となった、古地図に描かれていない善光寺は、善光寺坂付近から立坂辺りまで広がる大きな湧水池を有した寺で、それが斜面からの大量の湧水に伴う崖崩れの砂礫で流されて埋まったのかも知れません。

現在の善光寺坂は、崩れた斜面に修復された涌波村や大道割村や大桑村へ行く坂道で、立坂は以前からの台地上から渓谷脇を通って上下の境内へ行き来する階段。

そして大清水と養魚池や周辺の湧水は広大な境内の中の湧水池の一部だったかもです。

大清水への路地や水底に埋まる瀬戸物の破片は、何時頃の物なのでしょう?

ならば、善光寺はどの様な形態で此処に建立されていたのでしょうか……?

歴史に名前しか残されていない古の伽藍は、朝陽に照らされて夕陽を遠望できる台地上の縁に在ったのでしょうか?

それとも朝も暗くて寺町台地に沈む陽に闇が早い斜面下の際に建立されていたのでしょうか?

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PS 2:

1905年(明治38年)生まれで81歳で他界した祖父は、生前、大清水の石垣上に庭が広がる屋敷の葡萄畑と果樹園を経営する主と友人でした。

今も父が住まう実家は近所の立坂下の並びで、幼い頃の私は、主に会いに行く祖父に連れられて屋敷や敷地で遊んでいましたし、広い葡萄畑の隅々までも歩き回っていました。

葡萄畑が在る大清水周辺の土地だけが、砂礫が多くて水田には適さず、宅地化の区画整備がされるまで畑ばかりでした。

屋敷の敷地を囲む塀の南角に並ぶ石碑群は、葡萄畑や敷地に転がっていたのを主が集めて並べ立てたと聞いています。

大清水の石垣や洗い場が何時頃に造成されたのか、幼少の頃に大清水で小さな鮒やメダカなどの魚獲りをして遊んでいた1928年(昭和3年)生まれの父も、『既に現在の形になっていて、以前の状態は知らない』そうですが、『どうも加賀藩期から同じらしい』とも言っていましたね。

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いちご同盟 15歳で心中したい想いとは……

アニメ『四月は君の嘘』を繰り返し観て、コミック全巻を何度も読み、『小説 四月は君の嘘 6人のエチュード』も読みました。

そして、『いちご同盟/三田誠広 1990年初版』を繰り返し読み続けています。

最初にアニメ『四月は君の嘘』に出会えたのは、とても嬉しく思います。

故に『いちご同盟』を読み終えて、得た感動に自分は幸せだと感じています。

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『四月は君の嘘』では、入院したヒロインへ嘘カレが学校の図書館で借りて持って来た本の中に、『いちご同盟』の文庫本が有りました。

男子の心情を綴る一文は国語の教材に使われていて、中学校の図書館に置かれていても不思議ではない『いちご同盟』の貸し出しカードの名前欄には主人公の名が有りました。

一人でヒロインの病室へ来て、御見舞いの言葉に躊躇い、黙り続ける主人公をヒロインは、『いちご同盟』の言葉を使って迫ります。

ヒロインのベッドの傍らの車椅子に置かれた『いちご同盟』の文庫本。

「あなたって、ほんとうに変な人」

主人公の察しを知りつつも、

「病院に御見舞いに来たのに、ずうっと黙り込んでいるんですもの」

陰鬱な態度を責める言葉の後、

「あたしと心中しない?」

ヒロインは思い詰めた深刻な表情で真剣に誘います。

不治の病と幾許も無い余命を自覚するヒロインの思い詰めた言葉で、見舞いへ行くのを躊躇って間隔を空けた主人公に、

「もう来ないかと思ったわ」

ヒロインは『いちご同盟』のセリフで皮肉って、ダークに気持ちを探ります。

悪化する不治の病で死を覚悟した大好きな女子から、人生の終焉を一緒に願われるような予期しない突然の言葉と、そのイジけた投げ遣りさに、ピアニストの主人公も『いちご同盟』の内容から、

「君は王女様じゃないよ」

「僕はラヴェルなんて絶対弾かない」

『生きて!』、『諦めないで!』、『アゲイン!』の意味を込めて真摯に言い返します。

そして、自由にならない身体と儚い命の絶望に打ちひしがれていたヴァリオリニストのヒロインは、

「未練が生まれたのは、君のせいだ」

『生きて、再び彼と協奏を』と、心を奮い立たせます。

 

『四月は君の嘘』にリスペクトされた『いちご同盟』では、好きになる気持ちを隠して黙り込む良一に直美が涙目で笑いながら、

「あなたって、ほんとに変な人」

涙が零れて、

「だって、病院にお見舞いにきたのに、ずうっと黙り込んでいるんですもの」

意地悪い目付きの泣き笑い顔で会話を紡いで行き、そして、

「あなたに会いたかったの」

切実な想いを吐露すると、自殺を考える良一に身を寄せて、深刻な現実にケリをつける言葉を真剣に囁きます。

「あたしと、心中しない?」

文章はここで区切られて、直美の覚悟の言葉への良一の反応と直美の続く言葉が綴られていませんが、次章から良一の気持ちが逃げているのが伝わります。

良一が見舞いに来るのを待っていた直美は、挑むような眼差しで、

「もう来ないかと思ったわ」

病室へ来た『心中』と望む自殺の不吉さと理想の無さで迷う良一に、鋭く言い放っています。

知っているのに知らないフリをして相手を量る姑息さが、気丈夫に見せる直美に有りました。

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『四月は君の嘘』と『いちご同盟』の二人のヒロインは、幾許も無い余命を生き抜く覚悟と、絶望に自ら命を絶つ覚悟の両方が有りますが、どちらも一人では怖いのです。

そのヒロイン達の目に映る好きな主人公達には、ヒロインと一緒に飛ぶ覚悟が有ったのだろうか?

自殺願望を持っていたのに即答できず、その後日に告白して直美の想いを知っても、形振り構わずに直美に『生きろ』と励まさない良一は、片方の肺を切除して、やっと生きている辛い状態の直美に

「どこへも行かないでくれ」

こんなタイミングを失した事を言う残念なヘタレで、

「あなたのそばにいるわ」

直美は、今生の別れの言葉を返してしまう。

(直美には、「あたしと心中……」ではなくて、「一緒に来てくれる?」って訊いて欲しかったな。そして、黙り込む良一に「嘘よ」と、笑わない顔で続けて、「あなたのそばにいるわ」と、気丈夫に言って貰いたかったです)

 

飛んで自ら命を絶った小学五年生の『ばかやろう』に感化された良一の自殺願望は、自殺への短絡的で中途半端な憧れでしか有りませんでした。

 

なぜ、幼稚園から直美と幼馴染で兄妹のように親しい徹也は、良一を病室へ連れて行って直美に会わせたのだろう?

野球部で活躍する徹也の姿を見たかっただけの直美は、突然の良一の来訪をどう考えたのだろう?

片足を失って入院する直美は、徹也に良一を連れて来て欲しくなかっただろうと思う。

直美は病室のベッドで寝ている姿も、片足を失った姿も、理由も、良一に見られたくも、知られたくもなかっただろう。

『もう来ないで』、『こんな、あたしでも』、そんな痛々しい気丈夫さで脚部を隠していた毛布を除けた直美は、どんなに辛い気持ちになっていた事でしょう。

掛け替えの無い直美の生死を左右する手術が済むのを待つ間に、カツ丼を病院の食堂で食べる食欲を、『仕方が無い』と言い訳しながら漠然と反省しつつも、その直後に待合室で良一と相撲を取るのはどうだろう?

徹也と良一の、不安、切迫、想い、遣り切れなさ、もどかしさ、を現す行動に、いくら十四歳か、十五歳でも、相撲はないだろう。

状況と場所を弁えない相撲は、独善的で逞しい十五歳の徹也の短絡さと幼さをイメージさせて、切ない嘆かわしさと悲しみを感じさせたかったのだろうか?

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高校生の頃、少年マガジンに『愛と誠』の漫画が連載されていて、そのヒロインへの想いを綴ったサブキャラの手紙に「君の為なら死ねる」の誓い文字が有り、私は片想いの女子の為に、そんな事をできるシリアスに遭遇するチャンスが有れば良いと考えていました。

 

『四月は君の嘘』と『いちご同盟』のヒロインの気持ちは、少しだけ解ります。

十六歳、高校二年生の初夏に私は、中枢神経麻痺による左下肢の進行性内翻足と不随運動を発病しました。

不随運動を伴いながら徐々に悪化して行く内翻足は、脳が覚醒している間は、筋肉に力が入りっぱなしで痛み、下がる爪先に握り続ける足指と接地しない足裏が歩行を困難にしました。

原因は分からず、治療薬も無くて、左足全体の神経ブロックを相談した静岡市の済生会病院で二度の筋肉移行手術を受けて、筋肉の力量バランスで戻して進行を止める事は出来ましたが、自分の意思で動かせない爪先と不随運動は今も同じです。

幸いにヒロイン達のような、片足を失ったり、両足を全く動かせなくなったりしていませんし、死に至る事も無い症状ですが、筋肉移行手術を知る前までは、これは罰で贖罪だと、随分悩みました。

 

入院しているヒロイン達の気持ちは、十四歳の中学二年の晩春に急性骨髄性白血病を患った息子なら感じていたと思います。

息子の不安で辛い一年近くの入院は、最善の治療と懸命な努力に多くの願いや祈り、そして100%適合した娘の骨髄の移植によって、生還に至る事ができました。

あれから、十五年を経た現在は放射線技師として元気に働いています。

 

直美の病気については、多聞に年間150人ほどが発病して、十代の思春期の少年少女が患い易い、骨の癌と呼ばれる『骨肉腫』ではないかと考えます。

『いちご同盟』が執筆された1990年代は、現在の様な四肢の部位を欠損させる事なく、患部の骨髄だけを処置する術式や転移後の放射線や化学治療は、開発途上で問題が多く、試される段階ではありませんでした。

片足を大腿部から切断したのは、膝関節に近い大腿骨部に腫瘍が有ったからでしょう。

また腫瘍が転移した片方の肺を全て切除したのは、片足の切断術後の一年を経たずに肺へ転移して、それが片肺の広い範囲だったと考えます。

悪性腫瘍で片足を切断してから肺にも腫瘍が有ると知らされるまで、直美は自分の未来を悲観していなくて人生に希望を抱いていた事でしょう。

病名や病状や余命を直美に告知しているのか分かりませんが、告知されていなくても腫瘍を除くのに片肺を失うしかないと自覚した時に、片肺を失くした後も腫瘍の転移は続いて、この病室のベッドで退院する事も無く、短い人生を終えるのだと悟ってしまったのでしょう。

死にたくなければ、生きたいのなら、失くしても人生に希望は有るからと諭され、元気になって欲しい、生きて欲しいと願われ、太腿から片足を切断する決意をした十四歳の直美の心は、苦しくて、悲しくて、悔しくて、その暗くて深い嘆きに叫び哭いた事でしょう。

そして、片肺も切除しなければならないと告げられた時、五感の全ての感覚が感じられないくらい絶望したでしょう。

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☆☆☆☆☆

咽喉に絡む痰に咳き込む窒息寸前の苦しみが薄れて、眠り、目覚めた時には、痛みでヒリつく首から出るパイプがベッド脇へ運ばれた人工心肺の機器に繋がれているのを見て、息が通っていない鼻腔と、声が出せない口を知ってしまう。

自分が生かされる為には、こうせざるしかないと動かせない身体を理解する十五歳になった少女は、既に残された肺にも転移が進んでいるのを悟っていたでしょう。

それは、晩期合併症の肺炎が治癒されなくて、機能を失って行く肺胞に自分の命が連れ去られるのだと。

※※※※※

麗らかな陽射しと優しい風が気持ち好い部屋で、ピアノを弾く良一の横で歌っていた。
伸ばした手を繋いだ徹也は、立って片手弾きしながら私をリードしてクルクルと回らせ、ステップを踏みながら躍り、私は窓の向こうの真っ青な蒼空と真っ白な雲を仰いでいる。

……心地良い夢を見ていた。

そんな素敵な夢を見た目覚めなのに、直ぐに私は現実に戻されてしまう。

薄暗い視界に白く濁った病室の天井が簡易クリーンルームの水滴の附着する透明膜を通して見え、それから、周囲に並んで自分を見詰める人達に気付く。

みんな見知っているはずなのに、蛍光灯の照明の光が透明膜で拡散されているのか、暈やけて顔が良く見えない。

その人達が一斉に揺れ動くけれど、声も、音も聞こえない。

徐々に夕刻のようだった明るさが、黄昏になって、それから、夜の月明かりになるみたいに暗さが増して行く。

両親と徹也と良一を眼が探すけれど、それらしい姿は星明りほどになってしまった明るさに判別ができない。

通らない息が声にさせてくれないのも忘れて名前を呼ぶけれど、口が動いているのを感じないまま、視界が真っ暗になって、起きているのか、寝ているのか、生きているのか、境目が無くなった感覚に、それすらも分からなくなった。

眠りに誘われるような感じに、『夢の続きが見れるといいな』と願いながら、意識が薄く広がって希薄で朧になって、今度こそは、二度と眼が覚めないのだと悟ってしまう。

※※※※※

直美の最期は、事情を選ばない突然の衝撃を伴う破壊音と激痛が、真っ暗で無感覚な闇になるサドンデスな死と違い、ベッドの上で安らかに眠りに就くような永眠であって欲しいと願います。

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深く重いテーマの悲しい結末でしたが、作者は健常者なのかな?

野球試合は臨場感が有って楽しく読めるのですが、ストーリー的にウエイトが大きくて、もっと直美の心境や良一と直美の時間を深く長くして貰いたかったですし、それに面白く楽しめたであろう長い人生の結を、平らな無感動で短縮してしまった小学五年生についての語り合いから、儚くても強く希望を導いて欲しかったですね。

また、楽曲のリズムを聞き覚えている読者にしか理解できないような、『タン、タタタ、ターン』などの擬音語を多く連ねてページ稼ぎをするような陳腐さが無く、言葉での表現は文章に重みを持たせ、曲の意味やリズムをイメージし易くて立体的に感じました。

 

PS:

違和感が有る徹也の歳に相応しく無い言い訳と、直美や直美の父の一方的に語る長いセリフに、中学生の時に見た大学紛争の報道と、共闘の言い訳的で一方通行なアジ演説の臭いがしました。

恐らく、直美の父が語る一割も理解できないであろう内容を十五歳の良一に話す事と、『私はこんなに可愛そうなの』と直美が良一に話す事は、作中へ上手く鏤めたなら、もっと、纏まったラストになったと思います。