「スゲエ! 豚が雲を引いた!」と、劇場版アニメ『紅の豚』で空賊『マンマユート団』のボスが、カーチスとの空中戦で捻り込みの好位置に着こうと高速で急旋回するポルコの赤い戦闘飛行艇を見て言った雲は、ヴェイパーです。
香港空港から関西空港へ向かう旅客機が、上昇中の高度五千メートル辺りでバンクした際に、主翼の翼端から雲の筋を引きました。
これはヴェイパー(Vapour)と呼ばれるタイプの飛行機雲で、翼の端で翼下面の空気がバンクにより、通常以上の揚力が生じて更に気圧が低くなった翼上面へと流れ込む断熱膨張で温度を下げ、そして、渦を巻いて流入する水蒸気を凝縮させた水滴が、後方へ引く雲筋として見えるのです。
ズームした写真でも、凝縮した大気が翼端の後ろで渦を巻いていますね。
急激な翼端の気圧差の発生は、翼をバタ付かせて失速させる原因にもなりますが、電子制御で最良の飛行状態を保つ現代の旅客機は普通に問題有りません。
翼の上下面の気圧差で起きるヴェイパーは、飛行中の翼端以外にも着陸時のフラップの作動加減で見られる事が有ります。
レース中のフォーミュラーカー(F1マシン)のウイングにも発生しているので、普通車にも高揚力のウイングを付けて角度を可変できるようにすれば、高速道路の速度100km/h程度でも雲を引くかも知れませんね。