香箱蟹(コウバコガニ)を捌いて盛り付けてみました。
漁獲される地方によって、『松葉ガニ』、『越前ガニ』、『ヨシガニ』、『タイザガニ』と、呼び名が変わる大振りなズワイガニは雄です。
比べてずっと小振りな香箱蟹は、その雌です。
身が多くて食べ応えの有るズワイガニは観光客に人気ですが、美味しいのは香箱蟹で、数年前までは地元民が安く食す為に、市場では控えめに、観光土産屋では殆ど、売られていませんでした。
小振りな雌は『コウバコガニ』以外に、食される地域によって、『セコガニ』、『コッペガニ』、『メガニ』、『オヤガニ』、『セイコガニ』、『クロコ』と、美味しくなさそうな名で呼ばれ、ワザと不味そうな感じにさせて、地元以外への流通を避けていた感じがします。
最近は地元以外にも知られるようになって人気が出て来たのと、漁期が11/6~1/6前後と短くなった為に値が上がって来ています。
細い手足に詰まった身は少ないですが、甘味が有ります。
オスのズアイガニの大きな足の身だけを食して、メスの香箱蟹のミソを知らないなんて、勿体無いですね!
小振りな外見の中には、腹部から食み出す茶色の外子と呼ばれる幾つもの卵の房に、豆腐のような白身とオレンジ色をした内子の塊の味噌が濃厚な旨味でビッチリと詰まっています。
味噌を食べ尽くした小さな甲羅を盃にして飲む酒は、格別な味わいで堪りません。
三杯の香箱蟹を調理(捌いて盛り付けた)して、大きな椎茸をソテー中。
PS1:カニヒルの卵について
甲羅には偶に黒い粒々が付いていますが、それは魚の体液を吸い取るカニヒルの卵です。
カニヒルはカニの体液を吸いませんし、特に害は無いですが茹でて食すれば、より安心でしょう。
PS2:香箱とズワイの名称について
雅な「香箱/コウバコ」の名は、『日本海の香り』を秘めた蟹だからとか、『甲羅で蓋をした香り箱』みたいとか、金沢弁の『小さくて早熟な可愛い女の子の意味のコウバク』が訛ってとか、『香り立つ高貴な方が食べた』からとか、『中の味噌が紅白』だからとか、いろんな語源が伝わっていますが、私的には、腹に「我が子を抱く」から故の「コヲダク」が北陸訛りに、「コウバコ」と聞こえたのだと思っています。
金沢に生まれ育っていますが、『コウバク』を日常会話で聞いた事が有りません。
早熟な発言や態度をする子を表現するのに、『あのザッカシイ子やろ』と言いますし、狡賢いは『はしかい』ですし、機転が利く事は『りくつな』です。
生意気は、『いさどい』や『じまんらしい』。
可愛いは、『あいそらしい』ですね。
「ズワイ」は、細い木の枝を指す古の言葉の「楚(すわえ、すはえ)」が訛ったらしいので、胴体を幹に、細く長い八本の足を扇状に広がる枝に見立てた、「松葉」と同じような縁起名なのでしょう。
因みに漢字表記の商品名は、縁起名らしくない「津和井蟹」と書かれるみたいです。